やはり、この時間が一番落ち着く。
愛しのComandanteでコーヒー豆を挽き、お湯を沸かす。普段なら何気なくYouTubeを流してしまうけれど、この日は違った。ゴリゴリと豆を挽く音や、少しずつ部屋に広がる香りを楽しみたくて、コーヒーに全神経を集中させる。
ゆっくりと一杯を淹れ、本を開く。
感想

こうしてコーヒーを片手に本を読んでいると、まるで自分が知的で優秀な人間になったような気がする。完全に錯覚なのだけれど、この錯覚は案外悪くない。
今回読んだのは、オードリー若林正恭さんの『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』。
一見すると淡々とした旅行記。しかし、ただ旅の思い出を書いた本ではない。若林さんらしい「少し斜めから見る視点」が面白く、観光地ではなく、その国の空気や暮らし、人々の価値観まで見えてくる。
読み進めるうちに、この本が問いかけているのは「資本主義の中で生きる自分たちと、キューバのような社会主義の国では、どちらが本当に幸せなのだろうか」ということなのではないかと感じた。
日本では、より良い服を着たい、より良い家に住みたい、より良い車に乗りたい。誰かより少しでも豊かでありたいという気持ちは、ごく自然なものとして存在している。
でも、その「もっと」の先に本当に幸せがあるのか。
若林さんがキューバを歩く姿を通して、日本では当たり前になっている新自由主義や競争社会を、少し離れた場所から見つめ直すことができた。普段なら気づかない違和感が、旅先の日常を通して浮かび上がってくる。
また、本の中では若林さんのお父さんの死についても語られる。
人生で最大の味方だった父。その最後の別れである火葬にさえ価格の違いがあるという現実を前に、「こんなところにも資本主義は入り込んでいるのか」と考える場面は、とても印象的だった。
芸人という仕事についての話も面白い。
テレビに出れば何百万人もの人に見てもらえる。でも、ライブで目の前のお客さんを笑わせる手応えは、数字では測れない価値がある。
便利さや効率を求めてきた現代だからこそ、失ってしまったものもある。
もちろん、便利になること自体は悪いことではない。スマホ一つで世界中とつながり、欲しいものもすぐ手に入る。僕自身、その恩恵をたくさん受けている。
だからこそ、「便利さ」と「人間らしさ」のバランスをどう取るのかを考えさせられた。
そして最後に印象に残ったのは、「今は所属先をいくつも持てる時代」という考え方だった。
会社だけ、学校だけ、地域だけではなく、趣味やSNS、オンラインコミュニティなど、自分が居場所を持てる場所はいくらでもある。一つの場所ですべてを満たそうとしなくてもいい。そう考えるだけで、少し肩の力が抜ける気がした。
コーヒーを飲みながら読む一冊として、とてもいい本だった。
まとめ
読後に答えが出る本ではない。でも、「幸せって何だろう」「豊かさって何だろう」と考えるきっかけをくれる。
そんな本こそ、長く心に残るのかもしれない。
そんなことを感じながら、資本主義の恩恵であるコーヒーを飲み干したのでした、、、



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